【実話 季節外れの怖い話】 深夜の横断歩道 後編
「お◯ぱい、お◯ぱい」
「ピー、ピー、ピー(自主規制)」
必死だった。
この時の自分にとっては、これにすがるしかなかったのだ。
もし先程見たものが、人外の者であれば初めての
経験となる。
信じられないぐらい怖い。
家に着くまでの間、繰り返しその呪文を唱えた。
色んな意味ですっきりした様な気がした。
ようやく自宅のマンションに到着した。
いつも見ているエントランス、そしてエレベーターホールが不気味に感じてしまう。
エレベーターは特にだ。
部屋のドアを開けると同棲している彼女が出迎えてくれた。
彼女は怖い話の部類は苦手な方なので、先程の出来事は伏せておく事にした。
いつも通り食事を済ませ、リビングで一服をする。
しかし、まだ先程見た光景に対する興奮の為、落ち着く事が出来なかった。
そして、それは次第に不安となった。
(もしかしたら、あれは人だったかもしれない...)
(だとしたら、その方が大問題だ...)
(あんな小さい女の子があの時間に...)
(事件や事故にでも巻き込まれたら...)
と思うと気が気ではなかった。
しかし、まだ人外の者である可能性が高いと思っていた自分は
結論を出せずにいた。
そして彼女に相談する事にした。
話すつもりはなかったが仕方ない。
そして、その経緯を話した。
流石にジュンジイナガワのモノマネはしないでおいた。
その結果、現地にもう一度行き確認しようという
事となった。
最悪の事態だけは避けたい。
あの女の子が事件や事故に巻き込まれたら取り返しがつかない。
自分と彼女は自転車を走らせた。
問題の横断歩道が近づきいてきた。
あの恐怖が甦る。
しかし、その場所には人影はなかった。
向かいの交番にも警察官が戻ってきていた。
あの出来事から小一時間経過しただろうか。
いつも通りな静かで平和な夜。
何か問題があった様な気配もない。
あれは一体何だったのだろうか。
無事に保護されて家に連れ戻されたのか。
はたまた...。
今となっては説明のしようがない。
後日分かった事だが、この団地は以前から変な噂が
あったらしい。
そして団地の裏手に公園があるのだが、
その場所は地元の人間の間では有名なスポットだった
事も分かった。
あれ以来、何も起こることはなかった。
いつも通り平和な日常を過ごしている。
この経験を通して分かった事。
それは、
下ネタに秘められた無限大の可能性。
それだけだ。