【実話 季節外れの怖い話】 深夜の横断歩道 前編
アパレルの企画として入社し、2年目の冬の話。
唐突だがアパレル業界は超絶ブラックだ。
残業や休日出勤は当たり前。
特に展示会前などは多数の毛根が死滅するぐらいの忙しさだ。
その日も遅くまで仕事をして終電に乗り込んだ。
最寄りの駅に到着するともはや人影もまばらだ。
そしてここから自宅までが地味に長い。
おおよそ徒歩で20分。
道中にはコンビニや交番もあるのだが、街灯が少なく
やたら暗い。
そして、何よりも県営の団地に差し掛かる所は特に薄気味悪い。無機質なアスファルトの塊が両サイドから
圧をかけてくる様な感じだ。
そのエリアに入ると横断歩道が姿を現わす。
そして斜め向かいには交番とLAWSONの灯りが暗闇を照している。
いつもの様にその横断歩道が見えてきた。
信号は赤で人が信号待ちをしている様だった。
しかし、そこで自分は一瞬目を疑った。
30メートルぐらい先には横断歩道が見えている。
そして、その脇の歩道に2.3歳ぐらいの女の子がしゃがんでいる。背を向けており顔は見えない。
そして何やら足元にある何かをまさぐっている様だ。
それは小さな段ボール箱の様に見えた。
自分はその光景に驚き足を止める。
思考も止まった。
向かいにある交番に目をやったが、人はいない。
巡回中なのだろうか。
自分以外、まだこの存在に気づいていないのだろうか。こんな時間に小さな女の子がいるのに。
と、考えていると急に怖くなった。
停止していた脳が働き始めた。
この夜中に小さな女の子が一人。
普通ではない。
こんな暗闇は大人でも薄気味悪いのに、子供が一人で外出するだろうか。
そしてあの段ボール箱。
あれを抱えてきたのか。
いや、やはり普通ではない。
絶対おかしい。
恐怖を感じた自分は、一旦引き返し大きく迂回し帰路に着いた。
こんな時はお祓いの呪文。
皆さんはご存知だろうか。
とっておきの呪文を。
「お◯ぱい、お◯ぱい」
「ピー、ピー、ピー(放送禁止用語連発)」
人外の者には下ネタがとてつもない効力を発揮する。
ラップ音が鳴った時もこれで解決してきた。
そうしているうちに自宅に着いた。
(続く)